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Unknown Lady's Diary

読書/映画/上原專祿/フィギュアスケート/セーラームーン/ロシア

【映画】「ヒトラー暗殺、13分の誤算」(オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督、2015年、ドイツ)

残念だけど、主人公に1ミリも感情移入できない映画だった。映画で言いたいことは分かるんだけど、主人公の思想や行動の背景説明が弱いように感じた。共産党員でも何でもない「普通の人」がヒトラー暗殺を試みた、という設定(じゃなくて事実なんだけど)がおもしろすぎて、その情報だけで自分なりに色々と想像したくなってしまうくらいだから、わたしが期待しすぎていたゆえにつまらなく感じてしまった、というだけかもしれないけど。

 
※以下はちょっとだけネタバレありストーリー概要。

 

主人公のゲオルグ・エルザーは普通の家具職人。共産党に共感していて、男友達と悪ノリして共産党を支援するような落書きを書いたこともあるけど、党員ではない。ある日、家族のトラブルで実家に帰ることになりしばらく滞在しているところ、恋に落ちる。そのまま田舎に居着いたが、ユダヤ人を差別して、ナチに傾倒していく世の中を見て、ヒトラーの暗殺を決意する。
 
※以下はネタバレあり感想。
知識人でも大学生でもない普通の社会人が世の中に違和感を覚える、というとこまでは理解できる。でも、「普通の」と言いつつ、彼は元々共産主義にけっこう共感していた。だってインターナショナルまで歌ってるんだもん。だから、「普通の生活をする中で反ナチ的思想を育んだ」のか、それとも「映画の中の出来事はきっかけであり、元々そういう人だった」のかがよくわからなくて混乱した。
 
それに、映画の公式サイトのイントロダクションには「恋と音楽、そして自由を謳歌していた男の揺ぎない信念」と書いてあるし、映画の中でも「あれは信念のある目だ(うろ覚え)」と言われるシーンがあったけど、まさにその「信念」をあまり感じられなかった。映画を見る限りでは、個人の突発的な行動にしか感じられなかったのだ。それを「信念」と表現するのは、ちょっとスケールが大きすぎるのでは…?とわたしは思ってしまった。だって、元々共産主義に共感してたとはいえ、プライベートな生活では、女の子をとっかえひっかえしたり、人妻に手を出したりする奴なんだもの…「信念」とか言われても唐突すぎるよ…。
 
この事件が大きく扱われるのは(メルケル首相もゲオルグ・エルザーを称賛したらしい)、彼が組織ぐるみではなく個人で考え、行動したところに意義があるからだと思う。それ自体はよく分かるし、だからこそわたしもこの映画を見に行ったのだ。だからこそ、彼がなぜ暗殺を企てたのか、もっと掘り下げてほしかった。「普通の人」は、反ナチ感情を抱いたとしても、「大きな犠牲を防ぐために」少数の犠牲は仕方ない、とまでは考えないだろう。なぜ「殺さなくては」とまで彼は追い詰められたのか。このあたりがちょっと残念な映画だった。
 
あっ、でも、現在と過去が行き来して、少しずつ謎が解けていくスタイルはけっこう楽しく見れた。楽しかったからこそ、途中まで感じてたよりも、いまひとつ話が掘り下げられなかったように感じてしまったのかもしれない。