@AZUSACHKA 's note

わたしの感想をわたしが読みたい。

【読書】北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』感想 - 批評家は深い意味を読み解く方が楽しいから批評する

 

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

お砂糖とスパイスと爆発的な何か?不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

 

Twitterでも有名な「saebou」さんこと北村紗衣さん。ずっと前からTwitterでフォローしていて、この本の下地になっているwezzyでの連載やブログの記事も時々読んでた。(「時々」というのは、インターネットの情報はあっというまに他の色んな情報に流れていってしまうので、Twitterでご本人をフォローしていても記事に気がつかず読まないままになってしまうことがあるということです。)


そんなsaebouさんの連載をテーマによって整理された形で読めるのがこの本。全体を通じて1番印象に残ったのは、「まえがき」に書いてあった【批評をすると「なんでわざわざそんやことをするんだ、純粋に楽しめばいいじゃないか」と言う人がいるけれど、自分は深い意味を読み解くほうが楽しいからやっている(10頁)】という内容だった。
批評をするとどうしてもその作品の良くないところも指摘することになるけど、良くないところを指摘する=けなしたい ってわけじゃないんだよね。対象の作品の良いところも良くないところも含めて楽しむのが批評なのかなと思う。
わたしも小説とか映画とか好きだけど、どうしても「これあんまり面白くないな…」って作品はある。でも批評しようと思って見たらどんな作品でも楽しめるのかもしれない。
それぞれのエッセイの内容ももちろん面白かったんだけど、それ以上に「深い意味を読み解くほうが楽しいから」という言葉が刺さった本だった。全体を通じて、どのエッセイでもその言葉を一番感じた。

 

ちなみにタイトルの副題は「まえがき」に書いてあった「切り口を見つけてそれに沿った分析をしてそのキーワードをタイトルにつける」をさっそく真似したものです。ちょっと照れくさいけど書き方の勉強になるのでしばらくマネしてみようと思います。

 

あとは細かいとこ箇条書きで。
・「自分の中のマギー(自分が内面化してしまっている社会的抑圧)に対抗するために、マギーに対抗する幻を自分の中に住まわせる」というのが面白かった。本の中では実在の人間が紹介されていたけれど、わたしはどんなフェミニストであっても人間である以上は長所も短所もある(人間を信仰の対象のように捉えてはいけない)と思ってるので、わたしなら物語の中の女性を選ぶかな?と思った。最近なら実写版アラジンのジャスミンとか、ちょっと前だとマッドマックスのフュリオサとか、この本で紹介されたもののなかでは『アントニークレオパトラ』のクレオパトラとか。GoTのデナーリスもいいよね、終盤以外…。かっこよくてフェミニズムのアイコンになりそうな女性はたくさんいるよね。自分のアイコンになる女性は誰かなと探しながら映画や小説を楽しむのもいいなと思った。


バーレスクには「反逆や風刺の精神、フェミニズム、自由への欲求、型にはまった美の基準への異議申し立てといった哲学」があるという話。わたしは映画「バーレスク」が好きで、日本によくある男向けのグラビアじゃない、こんな風にセクシーだけど下品じゃなくてかわいいけど強気でかっこよくて自分の体を自信たっぷりに披露するなんてことがあるのかと思って好きになったんだよね。だからフィギュアスケートでもシニアに上がり立てくらいの年齢の女子スケーターが使うのもいいなぁいいなぁと思って見てた。だから元々好きではあったけど、こんなに哲学のあるものだとは全然知らなかった。いいこと知れた。こんな哲学があるならぜひこれからも若い女の子に使って欲しいテーマだなあ。


・そういう意味では「サロメ」もそうかも。こんなに色々な解釈があるんだね。フィギュアスケートではミシェル・クワンくらいしか「サロメ」を使ったことのあるスケーターはわたしは思い浮かばないけど、有名なスケーターが使ったことのある有名なテーマにしては使われないものだなぁと思ってたんだよね。カルメンとかオペラ座の怪人とかは死ぬほどたくさん使われてるのに。


アガサ・クリスティの「ミス・マープル」もののドラマ作品に出てくるレズビアンカップルについて「ブッチ(男っぽい服装や立ち居振る舞いをするレズビアン)」と「フェム(女っぽいほう)」という描かれ方がしていたというのを知って、セーラームーンのはるかさんとみちるさんを思い出した。この二人はレズビアンカップル(ブッチとフェムの)なんだけど、「セーラームーン」が海外(アメリカ)で放送されたときは従姉妹同士という設定にされたんだよね…。イギリスではどうだったのかな?イギリスもキリスト教徒の多い国だけどアメリカとはまた事情が違うかな。セーラームーンアメリカで放送されたのは90年代、イギリスでこのドラマが放送されたのは(この本によると)2004年。国も時代も違うし片方は子供向けだから比較にはならないけど、つい並べてみてしまった。このドラマはアメリカで放送されたことあるのかな?あったとしたらこのドラマの二人はそのままレズビアンとして放送されたのかなぁ。だいぶ話が逸れちゃったけど、ちょっと気になったところだった。