@AZUSACHKA 's note

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【映画】「風と共に去りぬ」感想 - スカーレットと『白夜行』の雪穂

わたしが「風と共に去りぬ」という作品を認識したのは、東野圭吾の小説『白夜行』だった。主人公・雪穂の愛読書であり、彼女がスカーレットに憧れていたのだ。ただ、単なる憧れというよりは、雪穂が自分の人生とスカーレットのそれを重ねているような描写があって、だから『白夜行』の中でも重要なキーポイントとなる存在だった。なので、てっきりわたしはスカーレットも雪穂のような悪女だと思っていたのだけど、実際に映画を観てみると、あれ?それほど悪女ってわけでもないよね?と肩透かしをくらってしまった。
そんな感じで、映画「風と共に去りぬ」と『白夜行』を比べつつ短い感想を書いてみる。どちらもネタバレあり。

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 スカーレットについて。

パーティーではたくさんの男をはべらせる。女友達がほとんどいない。片思いの相手に振られた腹いせに好きでもない男と結婚する(しかも略奪愛)。妹の婚約者を奪う。結婚して子供まで設けてるのに他の男を思い続ける。あげく、夫には愛想を尽かされる。他にも色々と性格の面で問題がある。

ただ、人を殺したことはあるけど、相手は強盗なので当防衛の範疇。

正直、雪穂に比べれば、スカーレットの悪女っぷりなんてカワイイものだと思う。雪穂なんて、自分の友人が自分の片思いの相手の恋人になったら、亮司を使って自分の友人を強姦未遂に遭わせてる。自分を苛めた同級生を亮司に強姦させてる。この他にも色々ありすぎて全部書けない。

むしろ、色恋関係を除けばスカーレットって尊敬に値する人物だと思うのだ。メラニーと彼女の子どもを連れてタラまで逃げるところはすごい。置いて逃げたら目覚めが悪いっていうのももちろんあるだろうけど、恋敵とその子どもなんて、雪穂なら絶対に置いてくよね?戦争が終わってタラがぼろぼろになって、家族を食べさせていくために彼女が手を荒れさせて必死になって働くところなんて、本当に偉い。(妹たちもちょっとは見習いなさい…と言いたいけど、当時としてはあの妹たちのような女の子のほうが普通なのか。)それから、妹の婚約者を奪う形で結婚したわけだけど、逆に考えればスカーレットだって「家族のために好きでもない男と結婚した」ってことだよね。妹が結婚すれば、男の嫁になるだけで、実家から離れてしまう。でも家を引っ張っている自分が結婚すれば、男の財力を利用して実家(タラ)も守れる。英断だと思うなあ。二度目の結婚後、事業を進めていくところも、当時の価値観ではああやって批判されるのは分かるけど、私にはすっごく格好良かった。結婚して玉の輿で終わり、じゃなくてちゃんと自分で稼いでいこうとする姿勢は、今なら当り前の価値観だよ。だからこそ、なんだかんだでメラニーとはずっと付き合いが続いたんだと思う。メラニーが人格者だっていう理由も大きいんだろうけど、でもやっぱりスカーレットも良い子だよ。

わたしはこんな風に感じるので、最終的にレット・バトラーもスカーレットから離れていってしまうのは彼女がかわいそうだ、と映画を見終えた直後には感じてしまった。でも改めてよく考えてみたら、スカーレットはすでに大黒柱として一家を支えた経験があるのだし、自分で仕事をすることもできる自立した女性なのだから、あの瞬間はかわいそうだけど、そこまで悲観的な状況でもないよなあ…と思えてきた。だからこそ「明日は明日の風が吹く」と彼女自身もあんなに前向きなのか。

白夜行』にも思いをはせてみる。雪穂はスカーレットになりたかったのかもしれない。でも、かわいそうだけど、雪穂とスカーレットは本質的には全然違う人間だと思う。スカーレットってなんだかんだで平和な娘時代には周りにチヤホヤ愛されてきたわけだから、多少まあ色恋沙汰で迷走することはあっても、犯罪には手を染めないのだ。心根は曲がってないのだ。雪穂は、かわいそうな子なんだけどね。

というわけで、やっぱり私の中でスカーレットは「それほど悪女ってわけでもないよね?」という結論に行き着くのだ。当時の社会の価値観と、現代に生きるわたし自身の価値観には違いがあるからそう感じるだけなのだろうけど、まあ評論を書いてるわけじゃないしそれでいいよね。