@AZUSACHKA 's note

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【読書】須賀しのぶ『革命前夜』(2015年、文藝春秋)

 

革命前夜 (文春文庫)

革命前夜 (文春文庫)

 

 

※リンクは文庫版だけど、読んだのは単行本です。

 

1989年の東ドイツドレスデンにピアノを学ぶ学生として留学した日本人の青年マヤマが主人公の物語。

須賀しのぶは『神の棘』がすごく面白くて好きだったのでその後も二つほど小説を読んでみて、これで四つめ。でも『神の棘』が一番面白かった。『神の棘』は長くて重くて読むのに時間がかかる小説だったけど、その他はさくさく気軽に読める感じ。ラノベ出身の作家さんだからかな?この『革命前夜』もベルリンの壁崩壊直前の東ドイツが舞台ということで『神の棘』みたいな雰囲気を期待して読んだんだけど、ちょっと思ってたのとは違ったなー。

テーマとしては、東ドイツという「壁」から自由を求めて脱出する人々が描かれる物語なので、『進撃の巨人』に似てるなと思った。

主人公のマヤマが恋をするドイツ人女性のクリスタも金髪美女と強い意志を感じさせる人で『進撃の巨人』のクリスタ(ヒストリア)を思い出させるし、登場人物の一人が彼女について語った「底辺に落とされてもなお、安全な家畜であることやりも、自由な人間であることを選んだのです」という言葉も『進撃の巨人』っぽかった。

でも『進撃の巨人』では、「壁」の外に出ることには成功したけど、壁の外に出れば自由になれたわけじゃない。壁の外には外でまた困難がある。だからといって「外」に出るのが無駄だと言いたいわけじゃないんだけど、「外に出る」だけで終わってしまう物語ってなんかちょっと物足りないなと思ってしまった。

作品違うけど、映画「マッドマックス 怒りのデスロード」のフュリオサたちだってイモータン・ジョーから逃げ出したけど結局ジョーを倒さないとどうにもならないと気付いて戻って倒したし、『進撃の巨人』の今まさに壁の外で戦ってるし。

 

クリスタたちが東ドイツを脱出しようとする一方で、「自分は有能な人間だからこそ東ドイツに残って国を変革すべきだ」と考えて東に残ることを選択したニナという女の子が出てきたけど、個人的にはニナのその後の方が気になった。