@AZUSACHKA 's note

わたしの感想をわたしが読みたい。

ろくでなしどもにあなたを粉砕させないでください - マーガレット・アトウッド『侍女の物語』感想

読んだ本の感想を最近ぜんぜん書けてなかった。読書の度にメモは取ってるんだけど、ちゃんと文章にして残しておかないと結局全然振り返らないんだよね。短くてもいいから感想をちゃんと書いておこう。
って本を読むたびに毎回思ってるんだけどなかなかできてない。

(あと、本の感想はけっこう読書会で消化してしまうことも多い。読書会で満足してしまう)

そんなわけで今年ようやく2冊目の感想!

 

出版されたのはけっこう前の小説なんだけど最近話題の小説。機会があって読む必要が出てきたので読んだ。面白かった!

ディストピア小説なので架空の世界なんだけど、ところどころに「今の自分が生きてる世界と同じだな」と感じる部分があった。

ディストピアなフィクションは普段あまり接種しない方なんだけど、これだけハッキリわかりやすく「女性が虐げられている社会」が描かれてるとわたしにもディストピアな世界観を理解しやすかった。

ディストピアな物語、映画だと「マッドマックス 怒りのデスロード」、漫画だと『きみを死なせないための物語』は好き。でも例えば小説の『わたしを離さないで』あたりは面白さよりも不思議さが勝ってしまってあまり楽しめなかったんだよね。なんとなく自分はディストピアを楽しめない方だと思い込んでたんだけど、これは面白かった。

最初の方の「世界観を手探りで理解してる段階」のときはいまいち乗れなかったんだけど、後半になるにつれてどんどん読み進められるようになれて楽しかった。

続編の『誓願』も近いうちに読みたいなー!

 

以下はネタバレありの箇条書き感想です。

 

  • 女性がハッキリと役割分担される社会で、女性同士が仲良くなったり連帯して抵抗したりしにくい社会になっているけれど、じゃあ男性がみんな上手い汁を吸っているかというとそうじゃないんだよね。「子どもを持てる男性」と「持てない男性」という違いがあったりとか。
  • 「子どもを産む」等の専門の仕事を持っていない、「なんでも(家事も出産も)やらなければならない」妻=「便利妻」という表現がすごいなーと思った。ディストピアでの名称だけどさあ、現代でも妻をそういうものだと思い込んでる夫ってぜんぜん珍しくないよね。
  • このギレアデ社会では「レイプ=死刑」らしくてそれはいいなって思った。それは確かに(作中の表現でいう)「されたくないことをされない自由」だね。(でも、これは結果的に女性の人権が守られることになってるけど、たぶん「他の男の所有物を傷つけてはいけない」的な発想だよね…)
  • 男子用小便器に対する「陰部を人目にさらすことで『自分は何も問題がない』『自分はここに属する人間だ』と言っているつもりなのだろうか」と主人公が考察するくだりが面白かった。わたしもずっとあの小便器スタイルが現代でも存在し続けるのか疑問だったんだけど、そういうことなの!?(ちなみに2021年に開館した八戸市美術館の男子トイレは全室個室みたいだよ。いいことだよね)
  • “Nolite te bastardes carborundorum”(奴らに虐げられるな)は良い言葉だなと思って調べたら、この言葉がプリントされたTシャツが出てきた。これいいね!こういうTシャツをデモに着て行ったら楽しそう。ちなみに、この言葉をGoogle翻訳にかけたら「ろくでなしどもにあなたを粉砕させないでください」って翻訳された。ろくでなしども。 
  • ユダヤ人は改宗してもいいしイスラエルに行ってもいい」のくだりはどうしても現実と接続して考えざるを得なくて、ちょっと悲しくなった。そうやって植民地化されていったのがイスラエルなんだよね。
  • 「もし恋に落ちないような、一度も恋をしないような者がいたら、それはミュータントか、宇宙からの侵略者にちがいなかった」のくだりはさすがに名作といえど古い作品だなと思った。だれもが恋をして生きるわけじゃないのにね。
  • 「歴史的背景に関する注釈」で「『地下女性鉄道』に『地下脆弱鉄道』というあだ名をつける歴史学者」というくだりが出てきて、あっ!アカデミアの女性差別だ!!!ってなった。ほんとむかつく。
  • 「人々が集団で強制的に移動させられ、主に汚染物質の清掃隊として消耗品のように使われていた」という「コロニー」って具体的にはどこの地域?国?をイメージして描いてるんだろうね。このギレアデ社会はアメリカだけど。最近『「犠牲区域」のアメリカ 核開発と先住民族』という本を読んだんだけど、もしかして先住民の居住区域なのかな…
  • 『イランとギレアデーー日記を通して見た二十世紀末のふたつの独裁神権政治』という架空の本が出てきたけど、このギレアデ社会は革命後のイランをイメージしてたのかなと感じた。なんでそう感じたのかというと、これを読んで『テヘランでロリータを読む』を思い出したから。「クーデターが起きた当初はイスラム今日の狂信者たちの仕業だと言っていた」のくだりとかも。ちなみにイラン革命は1979年、この小説の出版は1985年。ギレアデ社会はキリスト教原理主義者の独裁とのことだけど、原理主義になるとキリスト教イスラム教も似てくるって言いたいのかなあ…。でもさあ~こういうのって難しいよね。自分とは違う文化の社会における女性差別を指摘するとき、その文化自体を見下したりけなしたりしないようにしないといけないわけだけど、それってけっこう難しいことじゃない?わたしは日本の女性差別に怒ってるし解消されてほしいと思ってるけど、ヨーロッパや北米の白人から「日本は女性差別ひどい!やっぱり遅れてる国!」みたいな扱いされたらたぶん怒る。アトウッドはカナダ出身の作家だから、そのアトウッドが「なんとなくイスラム原理主義の国っぽいな」と感じさせるディストピアを物語にする、ってわたしはちょっとやだなと感じた。わたしの心が狭いだけかもしれないけど。面白かったけど、ちょっとだけ引っかかって100%絶賛はできないな~と感じた部分。