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Unknown Lady's Diary

読書/映画/上原專祿/フィギュアスケート/セーラームーン/ロシア

【映画】サラ・ガヴロン監督「未来を花束にして(原題;サフラジェット)」(2015年、イギリス)

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(左から(上から)順番に、フランス版・イギリス版・日本版です。わたしはフランス版が一番好きです)

この映画の存在は「#女性映画が日本に来るとこうなる」というTwitterハッシュタグで知りました。なるほどたしかにTwitter上でけちょんけちょんに言われてたとおり、「未来を花束にして」ってタイトルはたしかにひどいしチラシの雰囲気も全然映画に合ってない、と思いました。

しかも日本版のチラシには「100年後のあなたへ」と書いてありました。たしかにこの運動が約100年後を生きるわたしたちに繋がってるんだろうけど、当時の女性たちは「遠い未来の女性のために」と考えていたわけじゃないですよね。娘の未来のためと語る母親も出てこないわけじゃないけど、この映画の主人公たちは今現在の自分がきつくて苦しいからこそ戦っていたのに、それを「100年後のあなたへ」なんてひどすぎる。そもそも娘のためだけでもないぞ、自分のために戦っていたんじゃないのか。そんな風に言ったら、彼女たちがなにかものすごくふんわりしたもののために戦っていたみたいじゃないか。

しかも説明文に「名もなき花」とあったけれど、「名もなき花」と言われると「人格を持たない、ただ美しくあればいいだけの存在」と言われているようにわたしは感じてしまいます。そういう存在ではいたくないからこそ、彼女たちは戦っていたんじゃないかな…。

 

と、日本語版タイトル&ポスターをけなすところから始めてしまいましたが、映画はすごく良かったです。見に行ってよかった~!!主人公のモード・ワッツや運動の中心人物パンクハースト夫人の言葉の一つひとつが心に沁みました。パンクハースト氏の言葉はああいう運動を引っ張っていくカリスマならではの力強い言葉で良かったし、モードの言葉も自分にとって等身大だったからすごく良かったです。最初のほうに言ってた「もしかしたら他の生き方ができるのでは」が特に印象的でした。

 

「女性参政権運動の映画」と言われて、てっきり「ハンナ・アーレント」のような知識階級にいる女性たちの政治運動なのかと思っていましたが、見てみたら全然違いました。ごく普通の貧しい労働者たちの闘争の映画ですね。社会主義革命の闘争みたいでした。フランス版のポスターが一番わたしのイメージに近いです。

 

以下、ネタバレありの感想を箇条書きで↓

 

  • サフラジェットたちは投石でショーウィンドウのガラスを破壊したり郵便ポストや建築中の大臣の別荘を爆破したりして、殺人こそしてないけど過激な行動で物を破壊して自分たちの主張に耳を傾かせようとしているのだから、やってることはテロリズムなんだよね。でもあそこに至るまでに、平和的に行動していたのに実らなかった50年間があったんだよね...。テロだよなあとは思ったのだけど、女性に参政権があるのが当たり前の世の中に生きてるわたしがそんな風に切り捨てるのはなんか違うよなあ、とも思って、よくわからなくなりました。
  • かなり過激なことをしていたから、当初から夫は反対してたんだよね。サフラジェットたちと関わることをきつい口調で責めたあとにきちんと「それは君が心配だからだ」と伝えたり、夏は海に行きたいと話すモードにそんな夢を見るなと怒ったあとに(代わりに)週末は映画を見ようと提案したりなど、途中までは、言い過ぎたなーと思ったらちゃんとフォローを入れる気遣いのできる、理想的ってほどじゃないけどまあまあ良い夫だなと思っていたのですが、モードが初めて逮捕されてしまった時に彼は変わってしまいましたね。職場で同僚男性たちから「妻に恥をかかされたな」と言われたり近所の目があったりして、彼もまたきつかったんだろうな…。「女の敵は女」なんて言葉があるけど(わたしはこの言葉きらいだけど)、男性の敵もまた男性自身だよね。
  • この映画とは関係ないけど、この映画を見ていて思ったのが、自分の望む愛し方で愛されるっていうのは大事なことなんだな、ってことでした。夫のサニーは妻のモードをきっと彼なりに愛していたんだろうけど、モードが望む愛し方ではなかったんだよね。愛されてても自分の望む愛され方じゃなかったら愛されてないのと同じなんだよな…。(でも、それはサニーにとっても同じなのかな。サニーはモードに家でおとなしくしていてほしかったんだろうけど、モードはサニーのそういう望みに応えてあげることはできなかったわけだし。まあそもそもサニーがモードに「おとなしくしていてもらう」ことを望むなんて分不相応なんですけどね。そんなことを望んでいいのは、妻に家事労働すらさせる必要のないお金持ちくらいでしょ)
  • 良い意味で印象に残ったのは、パンクハースト夫人の演説の「私は奴隷より反抗者になる」という言葉でした。反対に、悪い意味で印象に残ったのは、スティード警部がモードにスパイをするよう取引を持ち掛けたときの「お前は存在しない」でした。このフレーズこそサフラジェットたちが戦っている相手ですよね。わたしたち女は、男と同じ人間です。ちゃんとここに存在しています。