@AZUSACHKA 's note

わたしの感想をわたしが読みたい。

読書

「もやもやする」を言語化する - 『アイヌもやもや』感想

アイヌもやもや: 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。 作者:北原モコットゥナシ 303BOOKS Amazon 12月に発売された本。金カム読史会の仲間が「こんな本が出るみたいだよ」と教えてくれたので読ん…

推しと結婚した話、というより - 『ニジンスキーは銀橋で踊らない』感想

最近ポッドキャストでTBSラジオ「アフター6ジャンクション」をよく聴いている。 TBSラジオ「アフター6ジャンクション」 - 「ニジンスキーは銀橋でおどらない」について by かげはら史帆 少し前、この番組で紹介されていた『ニジンスキーは銀橋で踊らない』が…

女子学生よ、大志を抱け - ウルフ『自分ひとりの部屋』感想

「タイトルだけで要点を伝えられる本」というのがあると思う。例えば『差別はたいてい悪意のない人がする』など。ウルフの『自分ひとりの部屋』も、そういう本だと思っていた。読む前は。 でも読んでみたら、「女性には自分ひとりの部屋が必要」という話では…

「バカバカしい差別論」と一笑に付さないために - 『アイヌ民族否定論に抗する』感想

友人と一緒にアイヌ史を学ぶ読書会を続けている。今月は『アイヌ民族否定論に抗する』を読んだ。最近、読書といえば読書会の課題本を読むことがほとんどで、読書会をやるとそれでもう満足してしまって自分だけの感想を書く気力が沸かないことが多かったんだ…

わたしにとってフェミニズムは楽しい -『お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード ジェンダー・フェミニズム批評入門』感想

北村紗衣さん(以下、さえぼうさん)の新作『お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロードージェンダー・フェミニズム批評入門』を読んだ。これはフェミニズム批評の本だけどわたしは批評を書けないので、自分にとってこの本がどういう影響を与えるのか(要するに感…

アイヌ史を学ぶ読書会を始めたのでウェブサイトを作りました

約2ヶ月前、漫画『ゴールデンカムイ』の最終回についての感想を書きました。あの最終回を受けて自分の中で出した結論が「アイヌ史を学ぶ」だったので、実際に本を読んでみました。まだ1冊だけですが、これから少しずつ何冊か読んでいくつもりです。トップ…

通りすがりの相手と背中を預け合うシスターフッド - 柚木麻子『らんたん』感想

鴻巣友季子さんによる紹介記事を通して知り、シスターフッド小説ということで興味を持ったので読んだ。すばらしいシスターフッドの物語だった!!!!すっごく面白かった〜〜 らんたん 作者:柚木麻子 小学館 Amazon 河井道と渡辺ゆりはシスターフッドの関係…

『同志少女よ、敵を撃て』読書会 - セラフィマとイリーナは"アスファルトに咲く花"

以前『同志少女よ、敵を撃て』の感想を書きました。その後、友人のな凧さんと改めて読書会をしたら、イリーナとセラフィマの関係性についての掘り下げで大いに盛り上がりました。この沸き立つ気持ちをシェアしたい!!セラフィマとイリーナ…良い!!という気…

ソ連の少女が冨岡義勇みたいな人に出会うフェミニズム小説 - 『同志少女よ、敵を撃て』感想

同志少女よ、敵を撃て 作者:逢坂 冬馬 早川書房 Amazon 夏に『戦争は女の顔をしていない』を読んだ直後、この作品がアガサ・クリスティー賞を受賞したと知った。その時から発売をずっと楽しみにしてたので、ようやく読めて嬉しい!! すごく良かったので感想…

文学だからこそ残せる歴史がある - 『戦争は女の顔をしていない』感想

主催している読書会(フェミニズム読史会)で『戦争は女の顔をしていない』を取り上げました。読書会が発足した2020年4月からずっとやりたいと思っていたものの、当時わたしたちはフェミニズム初学者だったので、証言文学だけで論点を見つけるのは難しいので…

抗議は楽しいものであるべき!『プッシー・ライオットの革命 自由のための闘い』感想

" data-en-clipboard="true">プッシー・ライオットのメンバーの一人、マリア・アリョーヒナ(以下、マーシャ)の獄中記。アマゾンレビューの「ロシアは獄中記の名産地」という言葉に興味がわいて読んでみた。 " data-en-clipboard="true"> プッシー・ライオ…

ある家族の歴史を通じて日本インドネシア史を知る - 『南島に輝く女王 三輪ヒデ: 国のない女の一代記』感想

倉沢愛子『南島に輝く女王 三輪ヒデ: 国のない女の一代記』(岩波書店、2021年)の感想です。友だちに教えてもらったのがきっかけで読みました。 南島に輝く女王 三輪ヒデ: 国のない女の一代記 作者:倉沢 愛子 岩波書店 Amazon

『戦争は女の顔をしていない』感想(+『鬼滅の刃』の女性キャラ描写について)

第2次世界大戦の際、ソ連軍やパルチザン部隊などには女性も参加していた。看護師や衛生兵としてだけでなく、実際に銃を手にとった狙撃兵もいた。この本は、作家アレクシエーヴィチによってまとめられた、彼女らのオーラル・ヒストリーといえる。ずっと前か…

女性史研究者が半生を振り返った本が面白かったから聞いてほしい - 総合女性史研究会『女性史と出会う』感想

女性史と出会う (歴史文化ライブラリー) 吉川弘文館 Amazon 図書館でジェンダー・フェミニズム関係の棚を眺めていてなんとなく手にとった本。気軽に読めるかな〜と借りて読んだらめちゃくちゃ面白くて、夢中で読んだ。 語っているのは全員1920年代〜30年代に…

『ジャッカ・ドフ二 海の記憶の物語』感想 - 海が繋ぐマイノリティの歴史

ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語 作者:津島 佑子 集英社 Amazon サハリンや北海道を舞台にした小説が読みたい、と人に話したらおすすめされた本。予想してたよりはサハリンも北海道も出てこなかったけど、初めて知る歴史にたくさん触れられて面白かった。

ポーランドとアイヌの抵抗の物語 - 『蝦夷地別件』と『また、桜の国で』

蝦夷地別件 (上) (小学館文庫) 作者:船戸 与一 小学館 Amazon 最近たまたまポーランド関係の作品に続けて出会っている。

読書サークル「フェミニズム読史会」のウェブサイトを作りました

以前よりブログ内で軽く触れていた「フェミニズム史を学ぶ読書会」のウェブサイトを作ったのでご報告します。 sites.google.com

アレクサンドラ・コロンタイの恋愛レボリューション1917

恋もして!仕事して!みんなで恋愛革命!✨\フゥー/✨ フェミニズム史を学ぶ読書会を昨年から続けているんですが、そこでロシア・ソ連のフェミニストであるアレクサンドラ・コロンタイを取り上げたました。読書会のために調べ始めたら彼女の思想がとてもおもし…

『氷結の森』感想 - マタギの谷垣を思い浮かべながら読んだ小説

知人にすすめられ、熊谷達也の小説『氷結の森』(2007年、集英社)を読んだ。 氷結の森 「森」シリーズ (集英社文庫) 作者:熊谷達也 発売日: 2014/12/05 メディア: Kindle版

『民衆暴力 - 一揆・暴動・虐殺の日本近代』感想 - 読むと逆にモヤモヤする誠実な本

藤野裕子さんという歴史研究者の本をずっと前から読んでみたいと思っていて、中公新書から8月に一般向けの本が発売されたので読んでみた。 民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書) 作者:藤野 裕子 発売日: 2020/08/20 メディア: 新書 藤野さんのこ…

『夢みる教養 - 文系女性のための知的生き方史』感想。とくに人文系の学問を学んできた女性たちへ

小平麻衣子『夢みる教養 - 文系女性のための知的生き方史』(河出書房新社、2016年) 夢みる教養:文系女性のための知的生き方史 (河出ブックス) 作者:小平 麻衣子 発売日: 2016/09/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) 春から続けているフェミニズム読史会…

『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち』で読書会を開きました

友人たちと一緒に「フェミニズム読史会(とくしかい)」という名前の読書会を立ち上げました。取り上げたのはSaebouさんこと北村紗衣さんの『シェイクスピア劇を楽しんだ女性たちーー近世の観劇と読書』です。 シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち:近世の観…

【読書】町田樹の「ティムシェル」を理解したくて、6年越しで『エデンの東』を読み始めてみた(4/4)

エデンの東 新訳版 (4) (ハヤカワepi文庫) 作者:ジョン・スタインベック 発売日: 2008/02/22 メディア: 文庫 町田樹を思い出しながら読む『エデンの東』、ついに最終巻。率直な感想としては「え…ここで終わり…?」だった。キャルはあの後どういう「選択」を…

【読書】川越宗一『熱源』(文藝春秋、2019年) - ポーランド人とアイヌ人がそれぞれ帝国主義に抵抗する話(ネタバレ有)

【第162回 直木賞受賞作】熱源 作者:川越 宗一 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/08/28 メディア: 単行本 2020年1月に直木賞を受賞して知った作品。サハリンに来たポーランド人(ブロニスラフ・ピウスツキ)がアイヌと出会うなんてウィルク(『ゴール…

【読書】町田樹の「ティムシェル」を理解したくて、6年越しで『エデンの東』を読み始めてみた(3/4)

エデンの東 新訳版 (3) (ハヤカワepi文庫)作者:ジョン・スタインベック発売日: 2008/02/22メディア: 文庫 第二巻を読んでからだいぶ時間が経ってしまった。年末には読み終えていたんだけどなんだかんだで遅くなってしまった。なので今回は短めに。 この巻で…

【読書】町田樹の「ティムシェル」を理解したくて、6年越しで『エデンの東』を読み始めてみた(2/4)

エデンの東 新訳版 (2) (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョン・スタインベック,土屋政雄 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2008/01/24 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 8回 この商品を含むブログ (11件) を見る 町田樹を思い出しながら読む『エデンの東』第…

【読書】町田樹の「ティムシェル」を理解したくて、6年越しで『エデンの東』を読み始めてみた(1/4)

エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョン・スタインベック,土屋政雄 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2008/01/24 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 37回 この商品を含むブログ (20件) を見る 町田樹がソチ五輪シーズンに掲げたテーマ「…

【読書】鈴木ふさ子『氷上のドリアン・グレイ 美しき男子フィギュアスケーターたち - 文芸評論家によるトリノ・バンク世代の男子スケーター批評

氷上のドリアン・グレイ―美しき男子フィギュアスケーターたち 作者: 鈴木ふさ子 出版社/メーカー: アーツアンドクラフツ 発売日: 2018/02/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る オスカー・ワイルド研究が専門の文芸評論家で尚且つフィギュアスケ…

【読書】ちくま評伝シリーズ『フリーダ・カーロ〜悲劇と情熱に生きた芸術家の生涯』 - フリーダ・カーロについて初めて読んだ本

フリーダ・カーロ ──悲劇と情熱に生きた芸術家の生涯 ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉 作者: 筑摩書房編集部 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2017/01/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ちくま評伝って初めて読んだ。1番最後に国語の試…

【読書】織田信成『フィギュアほど泣けるスポーツはない!』 - おだくんが「たくさんの人に楽しんでもらう」ために作った本

フィギュアほど泣けるスポーツはない! 作者: 織田信成 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/01/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 図書館で本を物色していてたまたま目についたので手に取ってみた。出版されたのが2018年1月なので…