@AZUSACHKA 's note

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【読書】三浦綾子『石ころのうた』

 

石ころのうた (角川文庫)

石ころのうた (角川文庫)

 

先日、旅行で旭川に行ったので読んでみた。恥ずかしながら三浦綾子という作家を全く知らなかったのだけど、『氷点』を書いた人なんですね。ドラマを見たことも小説を読んだこともないけどタイトルくらいは聞いたことがありました。その三浦綾子の書いたもののなかで、旅行中だったので気軽に読めるエッセイを…と考えて適当に手に取ったのが本作でした。そしたら内容がまさかの戦時中の話で、文庫版の解説では「三浦綾子の生涯の最暗部」「三浦文学の地獄篇」とまで書かれていて*1、もしかして1番初めに読むのは間違いだった…?と思いながら読み終えました。でも語り口は軽いので読みやすかったです。

三浦綾子は戦時中に教師をしていて、その頃の生徒や周りの人々との思い出について書いたもので、当時、軍国主義に没頭していた三浦綾子が昔を振り返って後悔するという内容でした。

戦時中に軍国主義へ没頭した教師というのは若い人が多かった、年齢層が上の教師(この作品の中では旭川の学校の芦田先生や横沢先生みたいな*2人たち)は大正デモクラシーを知っていた世代なので軍国主義には反発していた、というのは聞いたことがあります。三浦綾子もそういった軍国主義に傾倒した(させられた)若い教師の一人でした。

でも三浦綾子も教師とはいえ20歳そこそこの若者でしかなくて、世の中について何も知らない子どもといってもおかしくないんだよね。だから彼女もまた被害者なんだと思う。というか戦時中の罪について考えると支配者以外はだいたいそうなんだよね、同じ人間が加害者でもあり被害者でもあるっていう…。

語り口は軽いけど、じわじわと心が重くなるエッセイでした。

 

あとは細かいとこ諸々。

288頁 大阪へ行く際、受け持ちの生徒を二分して同学年の教師に預けた。また、教師の視察旅行があった、というくだりが気になった。今の学校の先生と扱いが違う…!視察旅行って何…!?

307頁 飛行場で炊事の手伝い(奉仕)をしてたときに出会ったTさんについて、はじめは嫌な奴だと思ってたのに婚約までした。そこに書いてた「いつか憎む日があるかも知れぬと思ってた愛せよ。いつか愛する日があるかも知れぬと思って憎め」がとても良い言葉だなと思って印象深かった。

*1:田宮裕三、文庫版361頁

*2:224頁,282頁らへん