@AZUSACHKA 's note

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【読書】三浦綾子『病めるときも』(角川書店、昭和57年初版、平成24年改版)感想

 

病めるときも (角川文庫)

病めるときも (角川文庫)

 

三浦綾子の短編集なんだけど、登場する悪役がスタンダードな悪の形ばかりでびっくりした。
「井戸」「足」は未成年に対する淫行(それぞれ少年と少女に対して)、「羽音」は若い女性が自分に恋をしていると勘違いするおじさん、「奈落の声」はネグレクト。
「どす黝き流れの中より」は「小さな女の子が誘拐されて犯人によって実の子として育てられ、誘拐犯だとは知らずに養父母を大事にする孝行娘に成長、そして実の家族に再会するものの家族とは実感できずむしろ反発」という(ちょっと違うけど)ストックホルム症候群的なストーリー、さらに「結婚したら夫が兄嫁と不倫してた&兄嫁は義父とも体の関係があった」というまとめサイトのようなドロドロ展開。
どの「悪」も、ネットで炎上したら犯罪者を擁護したり被害者自身の自己決定権がーとか喚いたりする人間が湧いて出てきそうなものばかりなんだよね。そういう微妙な「悪」ばかりよくここまでまとめたなと思ってびっくりしちゃった。


ただ、表題作の「病める時も」は「婚約者が病気になっても支え続ける健気な女性」という三浦綾子っぽい作品なんだよね。
裏表紙の内容紹介もこの作品についてだったから、読んでみてびっつくりした。表題作と他の作品の雰囲気が違いすぎる…。
「愛に飢え傷つきながらも前に進もうとする人々を通して、人生を描いた傑作短編集」って裏表紙の内容紹介には書かれていたけど、きれいにまとめたなと思った。笑

 

ところで最初の「井戸」の主人公・真樹子のモデルは三浦綾子自身だよね。14年間も病気で伏せていた女性、そんな彼女にプロポーズしてきた年下の男性。でも真樹子が病気だったことはあんまりストーリーには関係無かったので、これ三浦綾子の病気を知らない人が読んだらちんぷんかんぷんなんだろうな…


短編集なので感想短め。