@AZUSACHKA 's note

わたしの感想をわたしが読みたい。

女性史研究者が半生を振り返った本が面白かったから聞いてほしい - 総合女性史研究会『女性史と出会う』感想

 

 

図書館でジェンダーフェミニズム関係の棚を眺めていてなんとなく手にとった本。
気軽に読めるかな〜と借りて読んだらめちゃくちゃ面白くて、夢中で読んだ。

語っているのは全員1920年代〜30年代に生まれた女性史研究者。生まれた家のこと、戦時中のこと、受けた教育のこと、自分の研究のことなどを振り返って語っている。

 

 

まずいいなと思ったのは、これが聞き書き形式の本だということ。本来は文章を書くのが仕事の人たちに、あえて聞き取りをしているんです。その理由は以下の通り。

「そもそも、書くことを専門としている人たちにあえて聞き取りをさせていただいたのは、女性史に込めた思いの丈を語っていただきたかったからです。書くことでは自己抑制敵な方も『ここではじめて話すんだけど』と、胸に秘めた思いを年下の聞き手に話してくれました。」(190頁)

この「聞き取り」という手法自体がすごくフェミニズムっぽくて良かった!!!
そもそも女性の歴史って史料に残りづらいから女性史は難しい(とされる)からオーラル・ヒストリーを選んだことそのものがカウンターって感じがするし、「『人に話す』からこそ心を打ち明けられる」というのがもう分かる〜〜!!!!!過ぎて、本の成り立ちからしてときめきが過ぎた。

 

実は私、研究者の「なぜその研究を選んだのか」という話がそもそも大好物なんです。研究上の理由ではなく、その研究者の人生にとってなぜその研究が必要だったのか、みたいな話。そういう個人的な理由って著書や論文にはほぼ書かれないんだけどね。

でもこれは女性史研究者が半生を振り返る話なので、そういう話がじゃんじゃん出てくる。みんな自分自身の人生のために、自分を解放するために女性史を研究してるんですよ。私そういう話が大好物(2回目)なので本当に面白かった。

ちなみにこれは余談だけど以前これでも紹介したけど藤野裕子先生の「私と歴史学の不確かな関係」がとてもすてきなのでおすすめ!!!!

 

おもしろポイントがありすぎて長くなるので、以下簡単に箇条書き。

  • 私(azusachka)は東京女子大学出身なので、東女出身の研究者が戦時中を振り返った話が身近すぎて面白かった。「学内の軍需工場に伊勢丹デパートの店員が挺身隊として着ていた」とか、工場が終わったあと有志で源氏物語の講義を受けていた、とか。(←知らなくて恥ずかしいんだけど東女の学内にも工場あったんだ…)
  • 高校時代に吉野源三郎君たちはどう生きるか』(割と最近?話題になったよね)を読んだけど、男の子はこういう生活と展望ができるのかもしれないけど女の子はできないのだ、とがっかりした話(←この本読んでないけどこの感想興味深かった)
  • (当時)もっとも進歩的と思われた教員の社会における女性差別の話(←この「だから当時の運動って失敗したんだろうね…」感)
  • 「女性史をやらないか」と言われたけど「女性だからといってなぜ女性史を提案されるのか」と反発した人の話(←分かる〜)
  • 一方で、「女性史は評価されない」とされているからこそ「人がやらない女性史をやってみよう」と選択する人の話(←これも分かる〜〜)
  • ロシア語を勉強していて知り合った男性と恋したけど思想的にあわず破局した人の話(←これめちゃくちゃ詳しく聞きたいんですけど!!!)
  • 研究者は子どもを持たず学問に専念すべきという当時の常識に反発してみたかったから子どもを産む選択をした研究者の話(←「産むのが当たり前だから」産むのではなく目的意識があって産む人のほうが私はなんとなく好きだなって思う)

 

これから勉強してみたいなと思う内容も見つけた。私は学生時代に上原專祿という人を研究していたので戦後歴史学にも関心があるんですけど、この本に出てきた女性研究者たちの多くが井上清『日本女性史』を読んでるんですよね。めちゃくちゃ影響力があったみたい。
で、この『日本女性史』にもかかわる内容で、1970年には女性史論争というのがあったらしいんだけど、この論争の中身自体がめちゃくちゃ勉強になりそうなので、そのうち女性史論争についてもなにか読みたいなと思った。

 

小説ではなく勉強の本でこんなテンション上がったの久しぶり。
高めのテンションのまま一気にこれ書きました。
本当に面白い本なのでみんな読んでね!!!!!!!!!!!!!!!