@AZUSACHKA 's note

わたしの感想をわたしが読みたい。

並大抵の覚悟では挑めないもの - 記録映画「チロンヌㇷ゚カムイ イオマンテ」感想

ポレポレ東中野で上映中の記録映画。
チロンヌㇷ゚カムイ(キツネ)を神の国に送る、アイヌの祭祀。
1986年前に実施されたときの映像が映画化されたもの。
以下、簡単な感想。
記録映画だからネタバレとか特にないと思うけど、まっさらな状態で映画を観たい人は読まないでね。
 
  • ①想像してたより数倍手間のかかる儀式だった
  • ②「生きた」道具や衣装の姿を見ることができた
  • ③細かいとこの感想(箇条書き)

 

「私たちの戦いはこれからだ」ENDにしてほしかった - 『ゴールデンカムイ』最終回感想

まさかこんな結末になると思わなかった。正直、どちらかというと今はまだ戸惑いとショックが大きい。

このブログでゴールデンカムイについて詳しく感想を書いたことはなかったけれど、『熱源』『蝦夷地別件』『十勝平野』『氷結の森』を読んだのはゴールデンカムイの影響が大きかった。下ネタも多い漫画なのでちょっと言いにくかったけど、大好きな作品だった。

そのゴールデンカムイが先日(2022年4月末)最終回を迎えた。そこで描かれた作中世界の結末については、手厳しい批判が多い。わたしもショックを受けた。

本作は「現実への批判性を持ちつつエンタメとしても優れた作品」の一つになりうるものだと期待しながら読んでいたのだけど、あの最終回からは現実への批判性をあまり感じられなかった。(苦い現実への皮肉だ、ああいう現実になってほしいという願いを込めた結末だ、という見方もあるみたいだけど)

とはいえ、これだけの物語を単に「ひどい最終回だった」で終わらせるのはとても悲しい。まだ気持ちの整理がついていないのだけど、その戸惑いも含めて今の気持ちを形にしたく、本エントリーを書いた。

 

(以下2022/05/03追記)

ゴールデンカムイが大好きだったけど、あの最終回は批判すべき。でもまだ気持ちの整理がつかない。それだけ好きだったので」という人と気持ちを共有できたら…と思ってる。

あの最終回を「大団円」と認識してる人、反対にとことん厳しく批判すべきであると考えている人とは、もしかしたらあんまり共有できないかもしれない。

(追記終わり)

 

  • 最終回の批判点
    • アイヌの洗練された、生活に根ざされた文化は残せていないのに、「博物館での展示」を肯定的に描いた
    • アイヌ文化を奪ったのは和人なのに、アイヌと「和人の努力」によりアイヌ文化が保全された、と表現した無神経さ
    • ③白石が東南アジアに王国を建国した(可能性が高い)点
  • 風呂敷が広がりすぎてしまったのでは
    • 仮説
    • 中川裕さんの指摘
    • アシㇼパさんが背負わされたもの
    • ゴールデンカムイ最終回の苦さは現実の苦さ
  • ゴールデンカムイの「役割」とは
    • アイヌ文化が身近になった
    • キロランケやウイルクの思いを託されたのはアシㇼパさんだけじゃない
  • ゴールデンカムイに足りないものがあるならファンが埋め合わせよう
    • 互いに欠点を補い合って成長するフェミニズム
    • ともに背負っていこう

 

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通りすがりの相手と背中を預け合うシスターフッド - 柚木麻子『らんたん』感想

鴻巣友季子さんによる紹介記事を通して知り、シスターフッド小説ということで興味を持ったので読んだ。すばらしいシスターフッドの物語だった!!!!すっごく面白かった〜〜
 
河井道と渡辺ゆりはシスターフッドの関係にある。もともと二人は教師と教え子の関係だったのだけど、二人は同志として人生をともにするようになる。YMCAで活動するかたわら、渡辺ゆりは一色乕児と結婚するが、ゆりは道とシスターフッドの契りを結んでいるので、道・ゆり・乕児の3人で生活することになる。そして、道とゆりの二人は恵泉女学園を設立する。
 
以下、物語の核心に触れるネタバレはないはずだけど、内容には触れるのでネタバレ一切ダメな人は読まないで下さい。
 
  • 1.歴史上の有名人がこれでもかというほど出てくる
  • 2.女たちは一枚岩じゃないけど、必要なときには背中を守り合ってともに戦える
  • 3.細かいところの感想(箇条書き)ネタバレ注意

 

『同志少女よ、敵を撃て』読書会 - セラフィマとイリーナは"アスファルトに咲く花"

以前『同志少女よ、敵を撃て』の感想を書きました。その後、友人のな凧さんと改めて読書会をしたら、イリーナとセラフィマの関係性についての掘り下げで大いに盛り上がりました。この沸き立つ気持ちをシェアしたい!!セラフィマとイリーナ…良い!!という気持ちで語り合った記録です。内容は長くなったので、箇条書きでまとめた部分と会話形式を残した部分の両方があります。

以下、最初からネタバレしています。未読の方はご注意ください。

 

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  • 前半:一番のポイントはミハイル/ミハイルにムカつく私たち
    • ホモソーシャルを代表するキャラクターとしてのミハイル
    • 相対的な善、絶対的な善、という対比
    • 時代小説だが、問題意識は現代的な小説
  • 後半:百合語り - セラフィマとイリーナについて
    • “噛ませ犬”ミハイル
    • セラフィマとイリーナは恋人になったのか
    • そもそもセラフィマとイリーナの間にあるのは愛なのか
    • アスファルトに咲く花を愛してる
    • おわりに
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ネイサン・チェン、北京五輪2022金メダルおめでとう

2022年北京五輪フィギュアスケート男子シングルはネイサン・チェンが優勝した。

ブログではフィギュアスケートについてほとんど書いたことがなかったのだけど、節目なので、思い出として彼について書き残しておくことにした。

 

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ソ連の少女が冨岡義勇みたいな人に出会うフェミニズム小説 - 『同志少女よ、敵を撃て』感想

 

夏に『戦争は女の顔をしていない』を読んだ直後、この作品がアガサ・クリスティー賞を受賞したと知った。その時から発売をずっと楽しみにしてたので、ようやく読めて嬉しい!!

すごく良かったので感想を書きました。

前半にネタバレなし感想、後半にネタバレあり感想です。
 
  • 幸せが壊れるときにはいつも血の匂いがする
  • 少女が怒りを原動力にする物語
  • ネタバレあり感想(フェミニズムだなと思った部分について)
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文学だからこそ残せる歴史がある - 『戦争は女の顔をしていない』感想

主催している読書会(フェミニズム読史会)で『戦争は女の顔をしていない』を取り上げました。読書会が発足した2020年4月からずっとやりたいと思っていたものの、当時わたしたちはフェミニズム初学者だったので、証言文学だけで論点を見つけるのは難しいのでは…という理由で控えていた本だった。それが先月(2021年8月)、Eテレの「100分de名著」にて取り上げられたことで論点やポイントも読み取りやすくなるのではと思い、読書会で取り扱いをしてみた次第。
 
以前一度感想を書いたのだけど、改めて書き直したくなったので新しい感想を書きました。
 
関連書籍も含めて、以下の3点を読みました。